忍者ブログ
秋生のなんでもない日常の出来事
カテゴリー
◆ 小話(42) ◆ アトリエ(8) ◆ 拍手レス(57) ◆ 管理人の呟き(123) ◆ 日記(302) ◆ バトン(4) ◆ 旅行(22) ◆ カフェ&スイーツ(9)
  カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
  最新コメント
[06/11 月嶋紗羅香]
[04/17 月嶋紗羅香]
[03/12 月嶋紗羅香]
[02/17 ちよこ]
[04/22 みず]
  プロフィール
HN:
秋生
HP:
性別:
女性
自己紹介:
血液型 … A型
動物占い … トラ (だったと思う)
キャラミル
*オモテ … クール
*ウラ … ワイルド・リアリスト・
インスペクター
  ブログ内検索
[286] [285] [284] [283] [282] [281] [280] [279] [278] [277] [276]
2024/05/20 (Mon)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2008/08/16 (Sat)
拍手であまりにも心臓を狙い打たれるような素敵なコメントをいただいて、脳が暴走しました。
いただいたコメントを基に小話を作ってみました。
色々とはっちゃけてますが、心の広い方だけどうぞ。

++++ 3分待てば ++++


凄まじい勢いで通りを走りぬけ、マリーはクライスの工房へ飛び込んだ。

「なんの騒ぎです。ノックもなしに人の工房に押し入るとは…不躾にもほどがあるのではないのですか?」

「そ…それ…どころ…じゃ…ない…のよ。お湯…お湯ある?」

ぜいぜいと息を切らしながら、マリーは真剣な表情でクライスに迫る。
通常こういった場合、要求されるのは水であってお湯ではない。
一般常識が遠く離れた要求に嫌な予感を抱きつつ、その迫力に圧されかけている己を立て直すように、クライスは眼鏡を押し上げた。

「沸かせばありますよ。なんです。ついにお湯を沸かせなくなるほど、台所が有り得ない惨状を呈するようになったのですか。まったく、片付けるという言葉をあなたは理解しているのですか」

ぶちぶちと言い出したクライスをマリーはきっと睨みつけた。

「違うわよっ。お湯くらい沸かせるわ。ただ、あんまり冷めると効かないと思って、あんたの工房にあるか聞いたのよ」

まるで話が見えない。
クライスはまじまじとマリーを見て、不愉快そうに眉を寄せた。

「お湯が何に効くのです。まるで意味がわかりません。もう少し順序だててお話しなさい。幾ら知能指数が低く、語彙不足のあなたでも、人並み程度に話す努力はすべきです」

「な…ちょ…どさくさに紛れてメチャクチャ言わないでよ。誰の知能指数が低いですって!!」

「あなたですよ。この工房には私とあなたしか居ないのですから、必然的にあなた以外に該当しないでしょう」

しれっと言うクライスに、マリーは拳を握り締めてブルブルと震わせる。
文句は言いたいが、適当な言葉が出て来ない。

「それでお湯を何に使うのです」

口を無意味に開閉するマリーに、クライスは詰まらなそうに問いかけた。
その言葉に本来の目的を思い出し、マリーはぽんと手を打つ。

「あんたに、かけるのよ」

「は?」

「だから、あんたにお湯をかけるの」

「…熱湯を?」

「うん」

「………マルローネさん、騎士隊の詰所に同行して貰いましょうか」

「はあ?なんでよ」

地を這うようなクライスの声音に、マリーが素っ頓狂な声を上げる。
そんなマリーに負けじと、クライスは声を張り上げた。

「もちろん、殺人未遂事件の犯人として突き出すのですよ。熱湯をかけるとは、どんな了見ですか?私を殺す気だとしか思えないのですが?」

「え?ええっ?!違うわよ。殺す気なんてないわよ」

「殺す気はなくとも、下手をすれば死ぬでしょう。良くても大火傷です」

「だから、そんな気ないって!だって、あんた、お湯をかけて3分待つと、クール&ドライからホット&ウェットな性格に変わるんでしょう」

大真面目に言い切られ、クライスは固まった。
マリーの言葉は耳に入ったが、脳がそれを理解することを拒んでいる。
じっと凝視したままのクライスの視線の先で、マリーは居心地悪そうに身じろぎをする。

「そのまま10分以上放置すると、くてくてに伸びて、やる気のないダラダラした性格になるって…」

クライスはのろのろと右手をマリーの額に当てる。

「熱はないようですね。誰に聞いたのか知りませんが、あなたは私を何だと思っているのですか」

「何って…クライス…」

それでは人間でも動物でもなく、まるでクライスというカテゴリーの生物が存在するようではないか、と秀才は冷ややかにマリーを見据えた。

「マルローネさん。私はれっきとした人間です。お湯をかけて3分待てば食べられる簡易食料ではないのですよ。あなたのその頭に詰まっているはずの脳みそは、どうやら消費期限を過ぎて腐敗しているようですね。いっその事、おが屑と中身を入れ替えたらいかがですか」

いつもの不機嫌そうな顔ではなく、すっかり無表情になったクライスに冷たい視線を送られ、本気で怒らせた、とマリーは身震いした。
もの凄い暴言を吐かれているが、今はそれに対するツッコミをするどころではない。

「あははは…そ、そうだよね。いや、あたしも有り得ないかなぁとは思ったんだけど。でも、ちょっと、ダグラス並に熱いあんたが見れるなら、た、試してみてもいいかなぁ…とか、魔が差しちゃってさ」

笑って誤魔化しながらそのまま後退さる。

「お…お邪魔しました~」

そのままマリーは脱兎の如く逃げ出すのだった。
絶対零度の視線を背後に感じながら、クライスならお湯すらも凍らすに違いない、とマリーはそんな事を考えるのだった。

~終了~


「クライスにお湯をかけて3分待つと、クール&ドライからホット&ウェットな性格に変わったりするのでしょうか」
という、素敵すぎるコメントをいただきました。
ホット&ウェットなクライス、見てみたいなぁ。
こんな見事な発想が出来るセンスが欲しいです。
素敵なコメントを下さっただけでなく、不躾なお願いにもかかわらず、掲載許可をくださり、本当にありがとうございました。
こんな管理人ですが、どうかこれからもよろしくお願いいたします。
 

拍手

PR
この記事にコメントする
name*
title*
color*
mail*
URL*
comment*
password* Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ [PR]

* ILLUSTRATION BY nyao *