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2007/10/12 (Fri)
小話
サイトUP用に書いている話が難航しています。
まだ時間がかかりそうなので、時間稼ぎ的な話をブログに投下します。
クラマリのジュニアが出張ってます。
苦手な方は見ちゃダメですよー。
きっかけはよくある日常のヒトコマだった。
「おウチまでキョウソウしよう」
そんなささやかで可愛いらしいおねだりに、体力に自信のある母親は快諾した。
工房へと全力疾走する息子の背を見守りながら、ふいに今日は夫が家に居る事を思い出す。
これはマズイと慌ててその足を止めようとするが、時すでに遅く、彼は勢いよく扉を開き、工房の中へと駆け込んで行ってしまった。
開きっぱなしの扉が目に痛い。
子どもにはわりと甘いとはいえ、行儀や安全に対してはかなり口煩い夫だ。
危険物が満載の工房へ走り込むのは事故を起こしてくれ、と言わんばかりの所業だとネチネチ説教を食らうだろう。
しかも扉は開けっ放し。
背中の荷物よりもずっしりと重い心と足を引きずりながら、マリーは工房へと向かうのだった。
恐る恐る扉の内を覗くと、予想に反して夫であるクライスは上機嫌だった。
じゃれつく様に纏わり付いてくる息子の相手を実に楽しそうにしている。
息子に怒られた形跡はない。
戦々恐々と帰宅したマリーに嫌味ではなく労いの言葉さえかけてくる。
あまりの機嫌の良さに、かえって訝しさえ感じてしまう。
普段の彼は間違ってもそんな人間ではない。
何か性格を変えるようなアイテムでも誤飲したのかと、工房の何処にあるはずのアイテムを幾つか彼女が思い浮かべてしまっても仕方がない事だろう。
そんなマリーの困惑を他所に、クライスはお茶にするから手を洗ってきなさいと二人に指示をだす。
息子は元気よく返事をしながら、マリーの方を見て満面の笑顔をみせた。
マリーはこの顔をよく知っている。
お手伝いやささやかな悪戯等が上手くいった時に、嬉しくてたまらないと浮かべる笑みだ。
母親としての好奇心と言うより、対クライス戦のエキスパートとして非常に気になる。
だから洗面所に移動すると、彼女はこっそりと息子の耳に囁く。
「父さんに怒られない方法でもあるの?」
それに対して彼は力いっぱいに頷く。
「あのね。ヒケツがあるの。知りたい?」
舌ったらずな口調だが、難しい言葉を操るのは父親譲り。
眼鏡なんてかけた事もないのに、眼鏡を押し上げる真似までして首を小さく傾げてみせる。
瞳の色意外は全て父親譲りの外見をした彼がそんな仕草をすると、クライスのミニチュアが居るようにしか見えない。
しかしそんな澄ました表情は長くは続かない。
母親に似てコロコロとよく表情を変える彼は、すぐに言いたくて堪らないとウズウズした顔になる。
マリーも彼に我慢をさせる気はない。
むしろこちらは聞きたくてウズウズしている。
そうして母子は洗面所でこっそりと身を寄せ合う事になる。
母親の耳に手を当てて、内緒話には少しばかり大きい声で彼はその秘訣を伝授した。
それを聞きながら、マリーの表情はだんだんと強張ってくる。
「ね。カンタンでしょ。母さんも今度、やってみてね」
屈託なく笑う息子に、マリーは気合を総動員して無理やり笑顔を作って頷いた。
そのまま足取りも軽く洗面所を出て行く息子を見送って、マリーはぽつりと呟いた。
「ムリ。絶対にムリ・・・・それ、あたしには出来ない・・・」
工房に駆け込んで一直線にクライスに抱きつくなんて不可能だ。
ましてその時に『大好きっ』なんて言えるわけがない。
仮にまかり間違って出来たとしても、クライスが石化するか、変な物を拾い食いしたかを心配されるのが関の山だ。
確かに怒られないという当初の目的は達しているかもしれないが、しかしそれをやるくらいなら、素直に怒られた方が絶対にマシだ。
とは言え、これからしばらくは、どうして母さんはやらないの?と、聞かれまくる事が容易に想像できる。
「出会い頭に爆弾を投げつけるのなら得意なんだけどなぁ」
これ以上ないほど子どもの教育に悪い発言をして、マリーは深々とため息をつくのだった。
「おウチまでキョウソウしよう」
そんなささやかで可愛いらしいおねだりに、体力に自信のある母親は快諾した。
工房へと全力疾走する息子の背を見守りながら、ふいに今日は夫が家に居る事を思い出す。
これはマズイと慌ててその足を止めようとするが、時すでに遅く、彼は勢いよく扉を開き、工房の中へと駆け込んで行ってしまった。
開きっぱなしの扉が目に痛い。
子どもにはわりと甘いとはいえ、行儀や安全に対してはかなり口煩い夫だ。
危険物が満載の工房へ走り込むのは事故を起こしてくれ、と言わんばかりの所業だとネチネチ説教を食らうだろう。
しかも扉は開けっ放し。
背中の荷物よりもずっしりと重い心と足を引きずりながら、マリーは工房へと向かうのだった。
恐る恐る扉の内を覗くと、予想に反して夫であるクライスは上機嫌だった。
じゃれつく様に纏わり付いてくる息子の相手を実に楽しそうにしている。
息子に怒られた形跡はない。
戦々恐々と帰宅したマリーに嫌味ではなく労いの言葉さえかけてくる。
あまりの機嫌の良さに、かえって訝しさえ感じてしまう。
普段の彼は間違ってもそんな人間ではない。
何か性格を変えるようなアイテムでも誤飲したのかと、工房の何処にあるはずのアイテムを幾つか彼女が思い浮かべてしまっても仕方がない事だろう。
そんなマリーの困惑を他所に、クライスはお茶にするから手を洗ってきなさいと二人に指示をだす。
息子は元気よく返事をしながら、マリーの方を見て満面の笑顔をみせた。
マリーはこの顔をよく知っている。
お手伝いやささやかな悪戯等が上手くいった時に、嬉しくてたまらないと浮かべる笑みだ。
母親としての好奇心と言うより、対クライス戦のエキスパートとして非常に気になる。
だから洗面所に移動すると、彼女はこっそりと息子の耳に囁く。
「父さんに怒られない方法でもあるの?」
それに対して彼は力いっぱいに頷く。
「あのね。ヒケツがあるの。知りたい?」
舌ったらずな口調だが、難しい言葉を操るのは父親譲り。
眼鏡なんてかけた事もないのに、眼鏡を押し上げる真似までして首を小さく傾げてみせる。
瞳の色意外は全て父親譲りの外見をした彼がそんな仕草をすると、クライスのミニチュアが居るようにしか見えない。
しかしそんな澄ました表情は長くは続かない。
母親に似てコロコロとよく表情を変える彼は、すぐに言いたくて堪らないとウズウズした顔になる。
マリーも彼に我慢をさせる気はない。
むしろこちらは聞きたくてウズウズしている。
そうして母子は洗面所でこっそりと身を寄せ合う事になる。
母親の耳に手を当てて、内緒話には少しばかり大きい声で彼はその秘訣を伝授した。
それを聞きながら、マリーの表情はだんだんと強張ってくる。
「ね。カンタンでしょ。母さんも今度、やってみてね」
屈託なく笑う息子に、マリーは気合を総動員して無理やり笑顔を作って頷いた。
そのまま足取りも軽く洗面所を出て行く息子を見送って、マリーはぽつりと呟いた。
「ムリ。絶対にムリ・・・・それ、あたしには出来ない・・・」
工房に駆け込んで一直線にクライスに抱きつくなんて不可能だ。
ましてその時に『大好きっ』なんて言えるわけがない。
仮にまかり間違って出来たとしても、クライスが石化するか、変な物を拾い食いしたかを心配されるのが関の山だ。
確かに怒られないという当初の目的は達しているかもしれないが、しかしそれをやるくらいなら、素直に怒られた方が絶対にマシだ。
とは言え、これからしばらくは、どうして母さんはやらないの?と、聞かれまくる事が容易に想像できる。
「出会い頭に爆弾を投げつけるのなら得意なんだけどなぁ」
これ以上ないほど子どもの教育に悪い発言をして、マリーは深々とため息をつくのだった。
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