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今日はバレンタインです。
ちょっとネタが思い浮かんだので、投下。
もの凄く短いです。
色々とツッコミどころはあるかと思いますが、軽く笑って許してください。
++++愛の溢れる・・・++++
「やっぱりマリーを止めるべきじゃないか」
腕を組んで考え込んでいたルーウェンがぽつりと言えば、常にはなく真剣な表情で椅子に座っていたミューが困ったように頭をかく。
「そうなんだけどね。…あれを見ちゃうと、ちょっと言えないよ」
「おい、…あれを見たから止めるべきなんだろう」
ミューの言葉にすかさずロルフがツッコミを入れれば、ロマージュがその頭を間髪いれずに軽くはたく。
「女心がわからない奴ねぇ。マリーがクライスを驚かそうと、あんなに一生懸命にやっているのよ。邪魔するなんて無粋だわ」
「いってぇ…。本当のことだろう。確かに、あれを見たらビックリするさ。この世の物とは思えないからな。それに、無粋だとかなんだとか言うが、それ以前にどう考えてもあれを放置したら危険だろうが。止めないでどうするっ」
非常に常識的で良識的で良心にのっとったロルフの発言に、ミューが弱々しくため息をつく。
「止めるのはムリでも、やっぱり教えるくらいはしなくちゃだよねぇ」
「そうだな。せめてクライスに事前に教えてやるのが友情ってやつだって気がする」
「気がするじゃなくて、実際にそうだろうが。事前に知っていれば、あの兄さんのことだ。心構えも解毒剤も準備できるだろう」
気乗りしない口調の二人に、ロルフが活を入れるように熱弁を振るえば、ルーウェンがその肩を宥めるように叩く。
「大丈夫だ。解毒剤なんてわざわざ準備しないさ。あいつは常備している」
「…あんた、自信を持って言い切るところを間違っているぜ」
ロルフの冷ややかな指摘をルーウェンは軽く笑って流す。
そんなあまり建設的でない話し合いが飛翔亭ではなされていた。
「クライスに教えても、マリーを止めなければ、根本的な解決にならないんじゃないのかな」
軽く現実逃避している大人達に、歯に衣着せぬ言葉が小気味よく繰り出される。
「だいたい、なんでマリーは豚肉のチョコレートソースがけなんて奇抜な料理を考えついたのさ」
ごもっともな言葉に、ロマージュがそっと目を逸らす。
腕の良い料理人がきちんとしたレシピ通りに作れば美味しい料理なのだと、言い訳のように呟くのを聞きながら、残る者たちは一様に心の中で同じ事を思う。
でも、作ろうとしているのはマリーなのだ、と。
もちろん、ちゃんとしたレシピなど存在しない。
想像するだけでも、食欲が減少しそうな料理だ。
実際に料理の過程を見れば、食欲減少なんてかわいいものでは済まされない。
すでに口にするのも憚られるような物体が製作されつつあった。
「やっぱり、マリーにきちんと言うべきだよ。愛があっても、毒は毒だって。私、言ってくる」
拳を握り締めて断言すると、フランツは頼りない大人達に背を向けて飛翔亭を出て行った。
ある意味、彼女は勇者だった。
ただし物語と違い、勇者が必ず勝つとは限らないのが現実。
フランツがマリーを止められる可能性は、かなり低い。
バレンタインにクライスに渡さるのが、愛が溢れる産廃でないことを祈りながら、大人達はクライスに持っていく見舞いの品について相談し始めるのだった。