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かなり回復したのでリハビリがてら小話投下です。
携帯での創作はまだムリなので、今回は久しぶりにPCで製作。
と、言うか、仕事中に聞いていた「Home」と「I'm already there」にメチャクチャ引っ張られ、昼休みに一気に書いてしまいました(汗)
※「Home」はマイケル・ブーブレ、「I'm already there」はローンスターのヒット曲。
聞いたのはWest Lifeのカバーバージョンです。
未来設定で、クラxマリ+子ども達の話です。
大丈夫な方だけどうぞ
+++Back Home++++
面倒くさがりのあの女(ひと)が、いちいち手紙を書くのは嫌だから、と『風の便り鳥』を改造して録音した声を手紙代わりに届けられる様にしたのは、いったい何時だっただろうか。
定期報告を寄こせ、といくら催促しても、手紙だった頃はまったく来なかった便りが、声を吹込むだけになったらきちんと来る様になったのは、たぶん喜ばしい事のはず。
ケントニスの街を一望できる窓辺に止まった『改良版 風の便り鳥』を部屋に入れながらそんな事を思う。
「クライス、元気にしている?」
そんな言葉から始まる、相変わらず要領を得ない言葉を重ねながら、近況を報告するあの女(ひと)の声に、ふと小さく笑みを漏らす。
ザールブルグの街も人も変わりはないらしい。
少し騒々しくて、けれど平和な街の様子が脳裏に浮かぶ。
何も変わりがないなら、喜ばしい事だ。
2、3回繰り返しマルローネさんの声へ耳を傾け、それから今度は意識してあの人の声を締め出す。
地獄耳と褒められるくらいには自信のある聴力で、近況を語る彼女の声の後ろに微かに聞こえる幼い声を拾う。
「いつ、かえってくるの」
まだ舌ったらずの小さな少女の声に、やはりまだ幼い少年の声が答える。
「まだまだだよ」
「これくらい?」
「ううん。もっと…」
「もっと?」
「うん。うんといっぱい」
そこから先はさすがに何を言っているかまでは拾えなかったけれど、泣きそうな声の妹を慰めているのだろう、と予想出来る声のやり取りが聞こえる。
けれどそのやり取りも、彼女の報告が終わると同時に途切れてしまった。
彼女の声が消えた部屋は、静寂に包まれていた。
「この前、聞こえたのは笑い声だったのですけれどね…」
ぽつり、と呟いた自分の声は、彼女の報告する声より小さいはずなのに、一人きりの部屋にはひどく大きく響いた。
「まいりましたね。まさか…この年で…ホームシックとは…」
ため息混じりに天井を見上げ、目をそっと瞑る。
多少ムリをすれば、おそらく明後日までに仕事を終える事が出来るだろう。
予定などもう関係ない。
帰ろう。一日も早く、あの街へ。あの家に。
冷たいこの部屋から出て、あの温かい場所へ帰ろう。
そう決心して『風の便り鳥』を手に取る。
さて、これに何と吹込もうか、吹込むべき言葉を考えながら、また小さく笑みを零した。