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秋生のなんでもない日常の出来事
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2009/02/22 (Sun)

なんとなくVD小話の続き的なお話が浮かんだので書いてみました。
ノルxアイ ダグxエリ前提です。


+++ハズレのパンドラ+++


寮の物とはまるで違う重厚な扉を軽くノックして名乗る。
程なくして入室の許可を告げる声は、得に感情の色はない。
どうやら不機嫌ではないらしい。
声音からそれだけを読み取り、そしてそんな事が解るほど、いつの間にか付き合いが深くなった事にそっと苦笑する。

ゆっくりと扉を開き部屋に踏み込めば、昨日まで異彩を放ちながら鎮座ましましていた物体達が影も形もなくなっていた。
この部屋からあれらが姿を消すのと引き換えに、アカデミーで女生徒の悲鳴が上がった事を知る身では、いささか複雑な胸中だ。
そんな私情は横へ置き、ノルディスは用向きの説明と、それに伴う書類を部屋の主に手渡した。

微かに香る甘い匂いは、昨日の名残りだろうか。
女生徒の敵とも言える所業の片棒を、危うく担がされる所だったと思うと、心底恋人に感謝したくなる。
恋人を女神に例えるほどロマンチストではないが、今回ばかりは幸運の女神と言っても差し支えがない気がする。
先輩が書類に目を通し終わるのを待ちながら、ぼんやりとそんな事を考えていたノルディスは、ふと執務机の上に見覚えのある小箱を見つけた。

「エリーとあたしから。日頃の感謝を込めてね」

そんな言葉を添えられて渡された小箱の中身は、キャラメルが入ったショコラーデ。
なるほど、流石にこれは突っ返しはしなかったらしい。
勢いで採点くらいはしていそうだが、とこっそり笑いを噛み殺した。
笑いはうまく隠せたが、視線までは胡麻化せなかったらしい。
いつの間にか書類から視線を外したクライスが、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

「マシュマロ入りのショコラーデですよ。これは突き返すとうるさそうですからね。仕方がありません」

聞きもしないのに、中身を告げられ、言い訳めいた言葉が付随される。
そんなツンケンした態度に、何もそんなに照れなくても、と微笑ましい気分になれるのは、口の悪い馴染みの聖騎士に、意外と懐の広いヤツだよ、と言われる所以であろう。
ちなみに、ノルディスを筆頭に日頃の感謝を込めて渡されたショコラーデの中身は、皆同じだと同級生は言っていたハズだ。

口の悪い聖騎士も、エリーからは特別に貰っていたが、マリーからはキャラメル入りの物だ、と昨夜アイゼルが言っていた。
それほど甘い物が好きではない聖騎士が、うっかり二人で一つでいい、等と危険な発言をかましたらしく、乙女心を理解しない朴念仁だと、怒り狂っていたから間違いないだろう。
そんなささやかな違いに、おそらく気付いていないであろうクライスに、それを伝えるべきかしばし悩む。
その沈黙と表情をどう捕らえたのか、クライスは小さく嘆息した。

「それは言うなれば、出来損ないのパンドラの箱ですよ」

「は?」

パンドラの箱は知っている。
神話に出てくるこの世のありとあらゆる悪徳の詰まった箱だ。
確かその箱の1番底には、希望が入っているらしい。
はて、それで出来損ないとはどういう意味だろうか。
戸惑うノルディスに、クライスは更に不可解な事を言う。

「出来損ないと言うより、ハズレと言うべきかもしれませんね」

一人で納得されても困ると顔に出ていたのか、クライスは小さく肩を竦めて補足した。

「この箱の中には、希望ではなく、義理とか日頃の感謝や今後の無料奉仕への要求が入っているのですよ」

ある意味的を得た言葉に、思わず納得してしまう。
最後にあるハズの希望が入っていないから、ハズレのパンドラの箱とは上手いことを言うと思う。
だが秀才の哀しさで、その裏にある言葉の意味をも悟ってしまった。

つまり期待するだけムダ、という諦観にも似た気持ちを如実に反映する言葉でもあるわけだ。
フォローを入れようと思えば、入れられないわけではないが、入れれば確実に事態が拗れるだろう。
言葉を失くした後輩の気持ちに気付かぬ先輩は、何事もなかったかのように仕事の話を始めるのだった。
前途は茨の道より険しいらしい。

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