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秋生のなんでもない日常の出来事
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2008/10/30 (Thu)
本編で幼児化ネタをやっているので、ハロウィンも勢いついでに幼児化ネタを投下です。
大丈夫な方だけどうぞ。

++++ はっぴぃ はろうぃん! ++++

 

「Trick or treat!」

本日、何度目になるか分からぬ呼びかけに、仕事中の人間にまでたかるなよ、と苦笑しつつダグラスは声の主達を捜して視線を落とす。
仕事中と言いつつ、毎年しっかりアメを持っているから、子ども達の巡回ルートに組み込まれていることに、彼は気付いていない。
予想に違わず、小さな魔女と茶色の尖った耳を付けた少女がニコニコと笑いかけてくる。
その二人を見た瞬間、ダグラスは凍りついた。

けして衣装が異常に凝っていたからではない。
見覚えがあったからだ。
恐る恐る視線を外そうとしたところで、二人の影になるように立っていた小さな影に気づき、思わず悲鳴に似た声を上げる。

「こんな所で何をしていやがるっ!!」

「やあねぇ。見て分からない?ハロウィンよ。ハ・ロ・ウィ・ン」

魔女ドレスの裾を摘んで、金髪の少女が豪快に笑う。

「えへへ、似合うかな?」

控えめに、けれどダグラスの真意からは遠く離れたところでエリー(推定9才)が笑う。

「あんま…変わらねぇ…」

現実逃避気味に呟いた瞬間、思い切り向こう脛を蹴飛ばされた。
もっともダグラスの足は鎧で護られている為、蹴った方が痛いはずだ。
しかしそんな素ぶりも見せず、その小さな暴漢は眼鏡を押し上げた。

「くだらない世間話はけっこうです。お菓子を渡すか、私の依頼を受けるか、さっさと決めて下さい」

小さな吸血鬼を前に、どこからツッコミを入れるべきか、ダグラスは悩むのだった。

「理由なんざ聞かなくても、そこのネエちゃんとエリーはなんとなく分かる。だが、なんでオメェまでそんな格好をしているんだよ」

少し考えた後、ダグラスは至極真っ当な質問を繰り出した。
その質問に、クライスは深々とため息をつく。

「ハロウィンだからですよ」

忌々しげに放たれた言葉は、答えになっていない。
だが答えは思わぬところから来た。

「お菓子をくれなかったら、ちょっと悪戯をね」

楽しげに片目をつむってみせる魔女に、吸血鬼が恨みがましく、最初からそのつもりだった癖に、とぼやいている。
これで大方の見当は付くというものだ。
お前まで一緒になって何をやっているんだ、と少しばかりの非難を込めてエリーを見れば、困ったように笑われてしまった。
止められなかったんだな、とダグラスは小さく嘆息した。

「それで、あんたの依頼ってなんだ」

「ふう。この人達は厄介にも、とある人物に、元に戻る薬を預けたのです。その人物から、薬を貰ってきて欲しいのですよ」

厄介って何よ、厄介って、と不満の声を上げるマリーはこの際、無視することにする。
ここで喧嘩を始められるのも厄介だが、いつまでもここに居られても困るのだ。

「あ?自分で受け取りに行けば、いいんじゃねぇのか」

「察しの悪い人ですねぇ。私とて他人の手を借りるのは非常に不本意なのですが、この状況下では選んでいられないのですよ。だいたい、それが出来れば、このバカバカしい行事に付き合っていません。その人物が、薬を渡すのに条件を付けたのですよ。一定量のお菓子を集めなければ、薬は私の手に入らないのです」

つまりノルマを達しないと、この吸血鬼は元の姿に戻れないというわけである。
しかも強引に戻る為には、手段を選ばずその薬を回収する事が必要になる、と。

「それでお菓子か、依頼か、なわけかよ。なるほどな」

「納得していただけたようですね。それで、どちらを選ぶのです」

生真面目な顔で問いかけられ、ダグラスは頬を掻く。
クライスの横ではマリーがお菓子、お菓子と騒ぎ、エリーが困ったように笑いながら、それでもお菓子をねだる。
二人に飴を渡しながら、ダグラスは問いかけた。

「参考までに、そのとある人物って誰だ?」

「そんな事はどうでもいいでしょう。依頼を受けるのですか、受けないのですか」

強気な口調とは正反対にクライスは、あからさまに視線を逸らした。
ちょっと待て、どうでもよくねぇよ。
その態度にそんな言葉をなんとか飲み込んでエリーを見れば、声を出さずに一生懸命、唇を動かしていた。
それを読み取った瞬間、ダグラスは静かにクライスの肩に手を置く。

「飴をやる。コレで我慢してくれ」

その言葉に、クライスの瞳がやっぱりと言いたげに細められる。
いや、もしかしたら役立たずと言っているのかもしれない。
このさい、正直、どちらでも構わない。
大事なのは自分の身である。
強い者に立ち向かうサガの騎士にでも、避けて通る例外はあるのだ。

「特別に王宮に入れてやる。この時間なら謁見室に陛下も隊長もいるし、中の騎士たちも菓子の一つや二つ、持っているハズだ。隊長ならその依頼、受けてくれるかもしれねぇしな。がんばれ」

無責任な激励に、小さな肩を落とした姿が哀れを誘う。
おそらく彼にノルマを達成する以外の選択肢は、事実上ないはずだ。
今は1児の母であるその人物は、マリーの親友にして、ザールブルグ最強の人物。
その伝説の人から力ずくで薬を奪おうという猛者は存在しない。
上機嫌なマリーに連れられて、王宮へ入っていく小さなモンスター達をダグラスは静かに見送るのだった。
 

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