01 | 2025/02 | 03 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
![](http://bfile.shinobi.jp/1021/menukiiro.png)
![](http://bfile.shinobi.jp/1021/menukiiro.png)
小話を投下。
でも、いきなり小話が野放しになってしまってもなんなので、ちょこっと格納してあります。
読んでやってもいいぞという方だけ、「小話を読む?」をクリックしてくださいまし。
~限りある時~
1枚の紙を手に、マリーは薄く笑う。
世の中こんなものだと呟いた声は、自分でも驚くほど冷静だった。
人は有限の時しか持たぬ生き物。
自分の持つ時をどう使うか、それはその人間次第。
無為に過ごすには長く、何かを為すには、あまりに短過ぎる。
普段はすぐに忘れてしまうその事実を、唐突に突き付けられた。
自分に残された時間は少ない。
その覆ることのない現実を目の前にした時、人はもっと動揺するものだと思っていた。
けれど実際には、ひどく冷静に対処している自分がいる。
「あたしって、けっこう、理性的だったのね。今は、自分に出来る事をやらなきゃ」
くすりと笑って紙を握り潰す。
「どこが理性的ですか。自分に出来る事をやらねばならないとわかっているなら、現実逃避もほどほどにして、その現実を私に伝えなさい」
ぴしゃりと冷たい声が背中にぶつかる。
言葉にトゲどころか、刃物が無数に装備されているに違いない。
通常装備では防ぎきれないその攻撃にマリーが小さく呻く。
「た、たいした事じゃないわ」
強がってみせるマリーの手から、クライスは潰された紙を引ったくった。
抗議の声を上げるより早く、クライスの剣を帯びた視線がマリーを射抜く。
「どこが、たいした事ではないですか!依頼品の個数だけでなく、期日まで間違っているなんて信じられません!あなたは数もまともに数えられないのですか」
「べ、べつに数えられないわけじゃ…。ちょっと採取に行ったら、日数がわかんなくなっちゃっただけよ。5日くらい、誤差の内でしょ。それに個数は…ちょっとした勘違いじゃない」
「どこが誤差ですか!依頼品が2個も足りないのに、さらに5日も期日が縮まったのですよ。呆けてないで手を動かしなさい!」
「ううう…」
「泣いてもダメです。困るのはあなたなんですよ。べつに私は、あなたが期日に間に合わず、報酬を半額に減らされようがどうしようが、痛くも痒くもないのですよ。それとも、早々に諦めますか?」
「わかってるわよっ。こうなったら、何がなんでも間に合わせるわよ。クライス、出来上がるまで不眠不休だからねっ!」
「例によって資金繰りが厳しいのですね」
ぼうぼうと闘志を燃やすマリーの姿に、クライスはぼそりとツッコミを入れ、来るべき修羅場を思い描いてげんなりとしたようにため息をつくのだった。
リアルでよくある話ですよね(遠い目)